星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~歪んだ歯車4~



窮鼠猫を噛むと言うが、人間も例外ではないらしい

浩一が坂田からもらった仮想通貨を失ったのがちょ

うど一週間前だったが、それからのこのダメ男の行

動は早かった。普通の人間だったら失った物が大き

ければ大きいほどがっくりきて暫くは動けないもの

だが、どういう訳か浩一はがぜんスイッチが入って

しまったらしい、まず、仮想通貨の事を徹底的に調

べ出した。金がないのでちょっと情報は古いが公立

の図書館に行ってネットビジネス関係の本を借りま

くった。なけなしの金をはたいて、最新の仮想通貨

の事が書いてある本も一冊だけは買った。

 そして、調べれば調べるほど仮想通貨、正式には暗

号通貨と言うらしいが、このネット社会が生み出し

た画期的なイノベーションに浩一はある種の興奮と

未来を確信していた。

 

「これは間違いなく、来るな」

 

 浩一は、独り言をつぶやいた。仮想通貨の事を調べ

出して一週間だが、最初は漠然とした予感だったのが

段々とこれはひょっとしてすごい金儲けができるとい

う確信に変わって行った。 確かに、坂田から貰ったビ

ットコインを失った時にはさすがにショックを受けた、

なにせあの時失ったコインを日本円に変えると総額は

三千八百五十万円だったのだ。俺は何て高いハンバー

ガーを喰ってしまったんだろうと暫く落ち込んでしま

っていた。しかし、何といってもこの男の切り替えの

早さは前にも言ったが天才的なのである。この時、浩

一はこう考えたのだ。確かに失った物は大きかったが、

代わりに得たものの方が遥かに素晴らしかったんじゃ

ないのかと、それは同時に仮想通貨の影響力というも

のに驚いたという事に他ならない。ここ四、五年とい

う短期間にこれほどの値上がりを見せるというのは株

式とかFXの世界でもあるにはあるが、その比ではない

ような気がするのだ。し かもビットコインの値上がり

はもう爆上げに近いものでまだまだ上がる様相を見せ

ているのだ。

 

「まだ、遅くはないはずだ。仮想通貨は今始まったば

かりだ。この波に乗れさえすれば俺の人生奪還一発逆

転も夢じゃない」

 

とは、いうものの浩一にはあんまり気乗りしないのだ

が、どうしてもやらなくてはいけない事があった。そ

れも、早くやらないと意味がないのだ電話の回線が料

金延滞で切られる前じゃないと、浩一はおもむろに携

帯をつかんだ。

 

「はい、中村です」

 

 耳に聞きなじんだ母親の声が聞こえてきた。

 

「もし、もし俺だけど・・・浩一」

 

 少し、躊躇して浩一が返事をした。

 

「あ、浩ちゃん久しぶりねどうしたの何か用?」

 

 要件は、解ってるし言うこともはっきりしている

のだが中々言い出せない浩一だった、それでも意を

決して話し始めた。

 

「実は、お袋におりいって頼みがあるんだけど」

 

「どうせお金の事でしょ、解っているわよ幾らいる

の?」

 

 察しのいい親だなといつもながら浩一は感心して

いた。どうも浩一のダメ男っぷりはこの母親の甘や

かしに原因があるようだ、実は浩一の金の無心は今

日が初めてではなかった。何回も、会社を辞めてい

る浩一はそのたびに今回のように父親には内緒で母

親から金を借りていたのだ。

 金を借りるとは言っても一回も返したためしはない

のだが、そんな性格の浩一は人一倍厳格な父親とは

当然合わなくて実家と疎遠になってからもう何年に

もなる。

 

「それで、今回はどの位いるの、私も使えるお金が

限られてるからあんまり多くは貸せないわよ」

 

 と母親の法子が言った。

 

「悪いけどさ、三十万程貸して貰えないかな、いつ

になるか解らないけど必ず返すから」

 

 こんな、さらさら守る気も無い事を平気で言える

のが浩一と言う男だった。それを鵜のみにして金を

貸す母親も母親なのだが、まあ似たもの親子なのか

もしれない・・・

 

「お袋、いつも済まないこれで何とか急場をしのげ

る、けど親爺には内緒にしてな」

 

 それも、紀子がいつも聞く浩一のセリフだった。

そしてまた母親の方の返事もいつも一緒の事を言っ

ていた。

 

「解ってるわよ、それより振り込みする口座はいつ

もの所でいいのね」

 

「ああ、それは変わらないじゃ悪いけど頼んどくね」

 

 これで、浩一はなんとか仮想通貨に投資する原資

を得たのであるが、浩一の頭の中ではこの元手を使

って億の金をつかむ計画を着々と練っていた。犯罪

ではないはずなのだが、この中村浩一と言う少し、

いやかなりいい加減な男が絡むと犯罪でもするよう

に錯覚するのは作者だけだろうか?ともあれ、浩一

の人生奪還ゲームがこの日ついに始動したのだった。