星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 1 ~

 

REGAIN

 


 不覚にも寝てしまっていた。昨夜、深夜放送でやって

た映画「それでも、僕はやってない」が面白すぎてつい

最後まで見てしまったのがいけなかった。それから、直

ぐ寝たけど既に午前3時を回っていた。ハッと眼がさめ

て気がついたときには,すでに降りるべき駅を通り過ぎ

た後だった。


「まずい、まずいぞ会社に遅刻してしまう」


 次の駅に着いて、僕は電車のドアーが開くと同時にダ

ッシュで乗り換え口に向かおうと走りかけたその時いき

なり手をつかまれた。


「この人、痴漢です誰か駅員さん呼んでください」


 見知らぬ女子高生らしき女の子が僕の手をつかんでい

きなり叫び出した。


「はっ?」


 僕は、何が起きたか解らず呆然とつかまれた手とその

女の子を交互に見るのが精いっぱいだった、が、一瞬で

理解した。昨夜の映画の記憶がいきなり甦ってしまった

のだ。そしてその後の結末も映画の主人公がどうなって

しまうのかも・・・


「俺、会社辞めさせられんの」


 頭から血の気が下がって顔面蒼白になってる僕に向っ

て女子高生が何か喚いているのだがあんまり耳に入らな

かった。


「ちょっと、あんた聞いてんの何シカトしてんのよ!こ

の変態痴漢野郎」


 周りが騒然となって、非難の眼が一斉にこちらに向け

られているのが解る。「うわーこれも映画と同じだ」と

僕が絶望的になった時、誰かが呼んだのだろう若い駅員

がやって来た。


「えーと、すいません。あなたが痴漢被害を受けた方で

すか?」


 と、駅員が女子高生に聞いている女の子は僕の手をし

っかりと捕まえたまま眼には涙を浮かべながら頷いて答

えている。僕が潔白なのは僕自身が一番解っている訳で

そうであれあの涙は一体何なんだあれが演技とすれば女

子とはなんて恐ろしい生き物なんだ。何て、呑気なこと

を僕が考えてる間に事態はどんどん悪い方向に向かって

いた。


「じゃあ、とりあえず事務室にお二人とも来ていただき

ますか」


 そうなんだ、ここで逃げてもし捕まったら完全にクロ

だし、たとえ事務室で身の潔白を言っても多分誰も信じ

てくれないのが関の山、そのうち警察が来たらそれで僕

の未来はそこでお終いだ。うな垂れて駅員と女子高生に

挟まれるように事務室に連れていかれようとしていたそ

の時三人の後ろから女性の声が突然聞こえた。


「その人、痴漢してませんよ」


 三人が、一斉に振り向くと一人の若く、凛とした眼が

爽やかな一人の女性が立っていた。


「なによ、あんた突然出てきてこいつが痴漢やってない

って証拠でもあんのかよオ・バ・サ・ン」


 女子高生は自分の意見が真っ向から否定されたのがか

なり悔しかったとみて噛みつかんばかり勢いで怒鳴った。


「あるわよ」


 その、若い女性は落ち着いて答えた。


「あなた、私がその人の隣に座っていたの知ってるの?」


「えっ」


女子高生の顔に明らかに動揺が走った。


「知らなかったみたいね、あなた電車のドアーが開いた

時点で獲物を探して、たまたま捕まったのがその人って

事じゃないの」


さっきまで、噛みつきそうな勢いだった女子高生が急に

借りてきた猫のようにおとなしくなった。そこまで聞い

ていた若い駅員が二人の中に割って入って来た。


「まあ、こんな所で話すのも何ですから4人で事務室に

行きませんか」


 駅員が最初に僕の方を向いてそう言ったので仕方な

く頷いた。女子高生も渋々行く気になったみたいで駅

員の後ろからついて行く、駅員、女子高生、僕、そし

てあの若い女性が縦に並んで歩きだした時女性が僕の

耳にそっと囁いた。


「いまよ、逃げるのは」


「えっ」と言う間もなく僕は女性に手を引かれて走っ

た。駅員と女子高生は気づかずにそのまま事務室の方

へと歩いている。 もう、振り向きもせず猛ダッシュ

で二人はその場から離れた。遠くで「逃げたー」とあ

の女子高生の声が小さく聞こえたがその時は僕たちは

すでに改札を抜けていた。