星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 3 ~

 

 

「うーんと、この辺だったけどな、あ、あった」


 今朝、あんな事があったので気分一新の為にスカッと

するような映画でも借りようと会社が終わった後、駅前

のレンタルショップに来たのだが新作にも中々これはと

いう作品が無かったので思い切って古い作品を借りるこ

とにした。


「これだ、これだ」


 手に取ったのは、松田優作探偵物語だった。僕はリ

アルタイムでは松田優作は見たことは無かったが、テレ

ビの深夜映画でやってたのをたまたま見てファンになっ

た。それからは、良い作品が無い時には優作の映画かテ

レビシリーズを借りている。その日は、旧作を10本ほ

ど借りてレジで金を払い店を後にした。

 

「よーし、今日は土曜日だし一晩中映画三昧だな」


 
 アパートに帰る途中でコンビニでビールとつまみをし

こたま仕入れた。


「よし、これで準備万端ととのったぞ」


 僕のアパートは、駅から歩いて10分程の所にある。

最近引っ越したのだが、日当たりもいいし良い物件に

当たったんじゃないかと本気で思っている。駅のまわ

りには今はやりの店だったり、飲んだり食べたりする

おいしい店も結構そろってたりするので僕にはこの町

で、楽しく生活するには十分過ぎる町だった。そんな

事を色々考えている間にアパートに着いた。


「んっ。!」


 ドアノブに鍵を挿し回した瞬間、少し違和感を感じた。

いつも鍵を右に回して開けるのだがその時の抵抗感が無

かったのだ。鍵がかかって無い直感的にそう思った。鍵

を閉め忘れたかなとも考えたが、しかし少し寝不足気味

ではあったがちゃんと鍵を掛けたのは覚え

ていた。という事は・・・僕は用心しながら静かにドア

ノブを回して外開きのドアを開けようとした。


ドガッ」


 凄い音だった。その衝撃で僕は後方に吹っ飛ばされ、

頭をしたたか打ったが直ぐ起き上がった。その僕の眼の

前を黒い影が通り過ぎ様としているのが見えた。茫然と

なって言葉がなかなか出なかったがやっとの思いで絞り

出すように言った。


「ど、泥棒!」


 黒い影がその声にちらっと振り向いたようだったが顔

は解らなかった。そのまま一目散に逃げて行ってしまっ

た。僕は、そいつを追いかけようとしたが不覚にも腰が

抜けてしまってその場にへたり込んでしまっていた。


「それで、犯人の顔は見なかったんですね」


 駆けつけた警察官がそう僕に質問した。


「はあ、なにぶん暗かったもんで」


 警察官は矢継ぎ早に質問してきた。盗られた物は無い

のか、とか、壊された物は無いかとかそのたぐいの事で

あった。部屋は見る限りそう荒らされてはいなかった。

多分犯人が侵入して、暫くして僕が帰って来たものだか

ら犯人は品物を物色する暇もなく、泡食って逃げたのだ

ろうと言うのが警察官の見立てだった。結局、怪我も大

した事がなく盗られた物も無いという事で行きずりの窃

盗犯だろという所に落ち着いた。

 

「部屋の鍵は新しいものに変えた方がよろしいでしょ

う。それも出来れば二重にされた方が良いかと、それ

とこの辺りのパトロールを今後強化するように本署に

上申しておきますので」


 それだけ、言い残すと警察官は帰って行った。事件性

が薄いと呆気ないものだなと思ったが、まあとにかく鍵

は警察官の言う通り明日早速段取りしなけりゃと思った。

その夜、僕は借りてきた映画を一晩中見て夜を明かした。

犯人はどうやったか解らないが、この部屋の鍵を入手し

ていたという事だからもう一度帰って来ないとも限らな

いと思うと、怖くて眠るなんてとても出来ないと思った

のだが、夜明け前にはテレビの前でしっかり眠っていた。

買ってきたビールが睡眠を手伝ったみたいだった。翌

日、遅い朝食を済ませてから僕は防犯鍵の専門店に行く

ために都心に向かう電車に乗っていた。しかし、何でこ

んなに立て続けに事件に巻き込まれるんだろうと電車の

車窓から見える流れゆく景色を見ながら僕は考えに耽っ

ていた。


「何か、したのか俺」


 そう思って色々考えたが何も思い浮かばなかった。そ

うこうしてるうちに電車は目的地の渋谷駅に着いた。鍵

のショップは、駅から程ない所にあった。店では昨夜起

こったことを一部始終話して一番防犯性の高いものをお

願いしますという事で頼んだ。今、少し混んでいるので

二、三日掛かるという事であったが取り敢えず出来るだ

け急いでくれという事をお願いして店を後にした。


「さて、この後はどうするか」


 そう、思って渋谷のスクランブル交差点を少し急ぎ足

で歩いていると、その人は反対方向から来てやはり急ぎ

足で通り過ぎて行った。「あ、彼女だ」昨日、電車で危

ういところを助けてくれたあの彼女だった。僕は、悪い

と思ったが好奇心から彼女を尾行する事にした。


「これじゃ、まるでストーカーだな」


 彼女の早足について行くのに苦労したが、十分ほど歩

いて七階建てのビルに入って行くのを確かめてから、彼

女の後に続いた。5階にあったその会社の名称を見て僕

は妙に納得した。そこには田崎探偵事務所と書かれてい

たからだった。