星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 5 ~

 


「ねえ、聞いてます?」


 そう言われて、僕はハッとして彼女の眼を視てみた。

実は依頼した件を断られた後その理由を田崎所長が説明

してくれたのだが、それがあまりにも簡単すぎて僕は納

得しなかったのだ。


「まあ、単刀直入に申しあげますとこの件に関しては金

がかかり過ぎますな」


 とっ、此れだけ言うと田崎所長は応接室から出て行っ

てしまった。見かねた彼女が、と言うか由香里さんが所

長に断ってから僕をこのカフェに連れてきたのだが、僕

としては内心喜んでいた。あの田崎所長の苦虫噛み潰し

た様な顔を見て説明を受けるよりこっちの方が数段良か

った。何だか由香里さんと疑似デートをしてるみたいで

嬉しくもあり楽しかった。と言う訳で、僕は由香里さん

の話をうわの空で聞いて彼女の今日のファッションを鑑

賞していたのだ。


「先日のラフなスタイルも良かったけど、ビシッと決め

た今日のスーツ姿も良いな・・・」


 何て事を考えて、生返事なんかしてたものだから一所

懸命に話してた彼女に怒られてしまったのだ。


「もう、真面目に聞かないんだったら私帰りますよ」


 とっ、由香里さんに真顔で言われて僕は彼女に帰られ

たら困るので慌てて返事をした。


「あっ、ごめんなさい明日ある会社の重要なプレゼンを

つい思い出したものだから」


 僕は、適当なことを言ってごまかした。頭の回転の良

い彼女の事だから先刻お見通しだとは思ったのだが・・・


それで、さっきの話の続きなんだけど叔父の事は許して

下さいね。あんなぶっきらぼうな言い方しか出来ない人

なのよ。元は警察のたたき上げの刑事だったんだけどあ

の性格が祟ってキャリア組の幹部と衝突して最終的には

警察やめる羽目に成っちゃって、今の探偵事務所を開い

たってわけ」


 ここまで、一気に喋った彼女だったが頼んでた注文品

をボーイが持ってくると話そっちのけで、そのテーブル

の上のパフェをほうばり始めた。僕も、甘い物には目が

ない方なのでご相伴に預かったのだが、彼女は満足した

のか暫くしてまた話し始めた。


「それでね、あれが叔父なりの貴方に対する誠意なのよ」


「誠意?」


 僕は、不審そうな顔をしてそう言った。


「そう、実はこの業界は結構悪質な探偵事務所が多いの、

客の足もとを見て法外な料金を要求したり、貴方なんか

の場合だと犯人が中々探せないと嘘を言って引き延ばす

だけ引き延ばして、お金を取れるだけ取ったら適当な理

由をつけて結局探せませんでしたで後はポイって感じ」


 由香里さんは、そこまで言ってから残ってたパフェを

また食べた。


「ふーん、そうなんだ」


 僕は、由香里さんの話を感心しながら聞いていた。由

香里さんは口のまわりに着いたアイスクリームを備え付

けの紙で拭き取りながら話の続きを始めた。


「だから、貴方の場合・・・」


 そこまで彼女が言った時、僕は彼女の言葉を遮って言

った。


「良かったら、名前で呼んでくれたほうが嬉しいんだけ

ど」


 由香里さんは、ちょっと思案するような顔をしたが、

すかさず答えてくれた。


「解った、これからはあなたの事を結城さんてよばさせ

て貰います。じゃあ、さっきの続きなんだけど仮にこの

仕事を引受けたとして、どのくらいの費用が掛かると思

う?」


 僕は、よく映画の中でアメリカ人がやる様に両手を左

右に広げて少しふざけた感じで肩をすくめて見せた。


「そうよね、見当つかないと思うけど浮気調査を例にと

ってみましょうか、大体の総費用が十万から十五万円、

調査が長引いた場合それ以上になる事もあるし逆に思っ

た程時間が掛からなかった場合、安くなる事もある。

まあ、滅多にないけどね」


僕は彼女の話を聞きながら、まあここまでは想定内だ

なと思っていた。由香里さんはと言うと喋り過ぎて喉

が渇いたのかコップの水を一気に飲み干した後、また

話し始めた。


「本題を結城さんに戻すわね、さっき言った浮気調査

はターゲットが決まっているから調査もやり易いし、

調査期間もマニュアル通りに出来るけど結城さんの場

合は、そう簡単には行かないと思うの、何より犯人が

どこの誰とも解らないし、いつ現れるか見当も付かな

い状態で現場に張り付いて犯人が現れるのを待つなん

て到底現実的じゃないし、費用なんてとんでもない額

になってしまうに違いないわ、とても個人レベルで出

来る話じゃないと思うの」


 そこまで、話を聞いて僕は最初の勢いは何処へやら

流石に気持ちが萎えてボソッと呟くように言った。


「やっぱり、諦めるしか無いか」


 
 僕の、意気消沈した言葉を聞いていた彼女がまるで

待ってましたとばかりに言った。


「結城さん、諦めるにはまだ早いと思う」


 そう言うと、彼女はいたずらっ子の様に僕の眼を見て

ニヤリと笑った。