星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 11~

 

十一

 

「何で、こんな事に・・・」


 僕は、焦る心を押さえて夜の渋谷の繁華街を走っ

ていた。

 

 話は一週間前に遡ることになる。由香里さんの伯

父さん、田崎所長の許しを得て「僕の部屋に侵入し

た犯人探しと言うミッション」は、めでたく田崎探

偵事務所の仕事になって、由香里さんも今抱えてい

る仕事がひと段落したら本格的に、この件に取り組

む事でで話が決まった。


「で、防犯カメラに映っていた男の足取りは取れて

いるのか?」


 田崎所長が、デスクに肱をついた姿勢で言った。


「それはまだ、月曜と木曜の深夜に必ず結城さんの

部屋をうかがって居ることが解ったから、次の月曜

日に気付かれないよう後を追って居場所を探し出す

つもりよ」


そう言った、彼女の言葉で僕は身の引き締まる感

覚をおぼえた。それは、田崎所長も同じだったみた

いで、由香里さんの話に付け加えるように話し出し

た。


「ところで、結城さん一応確認だけど調査をうちの

事務所で受けるとなると当然、費用が発生する事に

なるけど、その辺は大丈夫かな。今までの様に由香

里のボランティアと言う訳には行かなくなるんでね」

 

 僕は、田崎所長と由香里さんを交互に見ながら答

えた。

 

「その事は、ここを初めて訪ねた時からそのつもり

でしたので大丈夫です」

 

 キッパリと僕が言ったので、心なしか田崎所長の

顔がほころんだような気がしたのだが、一瞬後には

厳しい顔に戻り由香里さんの方に向き直った。


「ところで、話は変わるけど由香里お前最近何かや

らかしてないか?俺の昔からの知り合いからの情報

で渋谷を根城にしているタチの悪い連中が若い女を

探しているって、その女の容貌がお前に似てるよう

なんでな」


 由香里さんは、例のいたずらっぽい眼を伯父の田

崎所長に向けると、こう切り出した。

 

「あーっそれ多分私だと思う。生意気な高校生に軽

くお仕置きをしたから」


 やっぱりお前か、と言う様な顔をして田崎所長が

彼女を睨みつけながら言った。

 

「由香里、少しばかり格闘技が得意だからと調子に

乗っていると今にしっぺ返しを喰らう事になるぞ。

暫くほとぼりが冷めるまで、お前は活動禁止だ。今

回は、俺が動くからお前は事務所で留守番だ。良い

な!」


 当然,何か言おうとする由香里さんの口を人差し

指で遮って、田崎所長は椅子に掛けてあった上着を

取ると、僕に行くぞと言う合図を送りさっさと部屋

から出て行ってしまった。


「由香里さん、悔しいと思うけどさっきの叔父さん

の話を聞いて僕もその方が良いと思った。あいつら

どう見ても悪質だし、狡猾そうだった」

 

「・・・・・」

 

「新しい情報は僕が逐一報告するから、由香里さん

はここで安心して待っていてほしい」

 

 僕は、彼女をなだめるような口調で言った。

 

「もう、叔父さんたら私を子ども扱いにして…」

 

 由香里さんは、不満そうだったけど僕としては一

安心という所だった。何しろ彼女の行動は、予測不

能の所があって過激だしそこが敵を作りやすいよう

な気がしてならないのだ。僕にもう少し彼女を守れ

る力が有れば良いのだけれどそこは、何とも心許な

いだから由香里さんが此処でおとなしくしていてく

れる方がすごく安心な気がする。

 

「じゃあ、田崎所長が待っていると思うのでこれで

行きます。あっ、それと良かったらこれ」

 

 僕は、ショルダーバッグの中から小さな紙袋を出

して由香里さんに渡した。

 

「何ですかこれ?」

 

 最初、不審がったが紙袋の印刷の文字を見て、彼

女は納得したみたいだった。それは、先日神社で購

入したあのお守りだった。

 

「でも、これと同じもの私も持ってるから要らない

わよ」

 

 とっ、言いながら由香里さんはそれを僕に返そう

としたので、すかさず言った。

 

「僕、子供のころの夢は何だったと思う?実はヒー

ローになりたかったんだ。ほら、か弱き女性を助け

るようなね」

 

 由香里さんは、明らかにそれが何なのと言う顔を

したが、構わず僕は話をつづけた。

 

「でも、現実は違った逆に僕が助けられる始末だ。

だから気持ちだけでも由香里さんを守りたいって

思って」

 

「それで、お守り二つ?」

 

 その時、せわしなくドアを叩く音がした。待たせ

ている田崎所長に違いないと僕たち二人は顔を見あ

わせた。それで、せかされた気になったのか由香里

さんはお守りを笑って受け取ってくれた。渡したお

守りを彼女が自分のバッグにの中に入れたのを見届

けた僕は、少し安心して事務所を後にした。