星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 13 ~

 

十三

 

 渋谷の繁華街と言えども一歩裏手に入ると普通に

薄暗い路地はあるもので、その一角にどう見てもガ

ラの良く無さそうな高校生の数人が、やはり同年代

と思われる少年二人を取り囲んでいた。中でも背が

高くて一番眼つきの悪いそいつが、その少年の胸ぐ

らをつかみブロック塀に押しつけていきなりみぞお

ちにひざ蹴りを送り込んだ。

 

「グッ、グフ」

 

 ガクッと膝をついた少年は、腹を抑えながら地面

に突っ伏していた。もう一人の少年は、その様子を

恐怖に引きつった顔で見ていたが、やがて慌ててポ

ケットの中からありったけの金を出して言った。

 

「す、すいません今日は本当にこれだけしか持って

ないんです。これで許してください」

 

 眼つきの悪いそいつは、少年にさらに脅しをかけ

る様に言った。

 

「最初から、逆らわずに大人しく金を出せばこんな

目に合わなくて済んだのによ!おい、そっちに転が

ってるやつのポケットも探ってみろ」

 

 いわゆる、これがカツアゲと言うやつでこの不良

たちの大事な資金源になっていた。

 

「チッ、シケてやがんなたったこれだけかよ」

 

 そう、言って次の獲物を狙うために場所替えしよ

うとした一団が歩きはじめた時、一番背の高い少年

の携帯が鳴った。

 

「あっ、何だ?はあ、良く聞こえねーよ。もうちょ

っとデカい声で話せよ、あっ、何あの生意気クソ女

を捕まえたって、そうか俺たちはもう少し稼いでか

ら行くからよ絶対逃がすなよ解ったな」

 

 街灯の明りの下で、仲間の方を振り返った男に捕

まえた獲物をどう料理しようかと言う残忍な思いが

顔に浮かびその顔を見慣れている筈の悪仲間も、ド

ン引きするほど陰惨な表情をしていた。そんな事を

知ってか知らずか渋谷の街の喧騒は相変わらずうる

ささを増して行った。

 


「でっ、由香里の行方は今もって解らずか?」

 

 田崎所長の顔は、明らかに僕を非難するような眼

で睨みつけていた。「いや、そんな顔されても」と、

僕は言いたかったが、その言葉をぐっと飲みこんだ。

今はそんなつまらない事で言い争いしてる場合では

ないのだ。こうしている間にも由香里さんがどんな

目にあっているのか想像する事すら恐ろしかった。

あの後、思い付く所は全て走り回って当たってみた

けど結局解らずじまいだった。こんな時頼りになり

そうな人は、一人しか思い浮かばなかった。それで、

田崎探偵事務所に来たのだが・・・」

 

「結城さん、由香里が拉致されてから時間はどの位

たったのかな?」

 


 田崎所長に、さっきの非難めいた眼は消えマジな

表情になっていた。

 


「最初に連絡を取り合ったのが、19時で、今が21時

だから約2時間に成りますね」

 

 取り出した煙草に火を付けるでもなく、100円ライ

ターをカチッカチっと言わせながら田崎所長は呟く

ように話し出した。

 

「2時間か・・・この手の拉致事件で6時間以内に助

け出せないと、まず間違いなく被害者は身体に暴行

か最悪の場合殺害されると言うのが普通だな、まし

てや由香里の場合拉致した連中にかなり恨まれてい

る可能性があるからな、それを考えても猶予は後4時

間という所か」

 

 僕は、田崎所長に腹を立てていた。まるで他人事の

ように冷静に喋っている。仮にも自分の姪が拉致され

ている訳だから、もう少し言い方が有りそうなものだ。

やっぱり実の娘と姪では違うものなのかと思わず勘ぐ

ってしまいそうだった。田崎所長は、腕組みをし目を

つぶってしばらく考えている風だったが、閉じていた

瞼をおもむろに開けると「良し」と、自分を納得させ

る言葉を言ったが早いか、その後の行動は半端なかっ

た。手持ちのバッグから、かなり使い込んでると思わ

れるメモ帳を取り出すと、電話を掛けまくり出した。

僕はと言えば、ただ不安な気持ちでそれを見ているし

かなかった。

 

「そうだ、事情はそういう事だからよろしく、何しろ

時間が無い!じゃ解ったら連絡を頼む」

 

 最後の電話を終えて受話器を降ろすとと僕の眼をじ

っと見て行った。

 

「出来ることは、全てやった。後はひたすら待つしか

ないかな」

 

 時刻は、午前0時になっていた。探偵事務所の中で、

男二人がただ電話を見つめ、まんじりともせずただ時

をやり過ごしていた。

 

「後、一時間で猶予は無くなるか・・・」

 

 誰に聞かせる訳でもなく僕は絶望的な気分になり、

つい独り言をつぶやいた。瞬間、電話が鳴り響いた。

 


「はい、田崎探偵事務所・・・そうか掴めたか良し

そこなら大体見当は付く、直ぐ行くから待っていて

くれ」

 

 ドアを叩き壊す勢いで田崎所長が、部屋から出て

行くのを見た僕も、慌てて後を追った。途中タクシ

ーを拾って車で約20分程走った。渋谷の中心地から

すると、華やかさは感じられないが新しいビルが建

ち並び今も建設途中の建物がある様な場所に着いた。

時刻は0時30分になっている猶予時間は、残り30分だ

った。タクシーを降りた僕たちは待ち合わせ場所に

急いだ。

 

「おーっ、待たせて悪かったな」

 

 田崎所長が、そう声を掛けたが待っていた男はろ

くに返事もせず、右手を出した。そこは田崎も心得

たもので万札を一枚その手に握らせると間髪入れず

聞いた。

 

「で、奴らは何処にいるんだ?」

 

 そこで、男ははじめて口を開いたが少し申し訳な

さそうな顔をしていた。

 

「旦那、旦那にはお世話になりっぱなしなんで最後

まで突き止めたかったんですが、ほんのちょっと目

を離してる間にこの付近で見失ってしまったんです。

ここいらだとは思うんですが・・・」

 

 その言葉を聞いた田崎は落胆するわけでもなく相

手の男の肩をポンと叩くと言った。

 

「そうか、ここまで解れば十分だ。後は、こちらで

何とかするからお前はもう帰っていいぞ御苦労だっ

た」

 

 そう言われた男は薄暗がりの夜道をトボトボ帰っ

て行った。

 


「とは、言ったもののこの場所から二人で由香里を

探し出すのは並大抵じゃないな。せめて何か手掛か

りが有ればいいんだが・・・」

 

 そこまで、聞いていた僕は何か大切な事を忘れて

いるような気がしていた。それが何だったのか思い

出せずにいた。が、突然「あっ」と、いきなり叫ん

で、その声にびっくりしている田崎所長の顔をまじ

まじと見た。