星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 14 ~


十四


 由香里の意識が徐々に戻って来て、少し身体を

動かそうとした時「ズキッ」っと後頭部に痛みが

走った。

 

「ウグッ」

 

 声にならない呻きが洩れた。それもその筈で由

香里の目と口は、ガムテープでしっかり塞がれて

いて、かろうじて鼻腔だけは塞がれてない状態だ

った。身体はロープ上の物でがんじがらめに縛ら

れ身動きひとつ出来ず冷たい床に転がされていた。

それでも、何とか体の向きを変えようともがいて

いると、腹部に重い痛みが走り由香里はもがくの

を辞めた。眼が見えないので、誰がやったのか解

らないがどうやら蹴りを入れられた様だ。

 

「オ・バ・サ・ン大人しくしときなよ。もうすぐ

お楽しみが始まるから」

 

 聞き覚えのある声だった。いつか結城に痴漢冤

罪をなすりつけようとした。あの女子高生に違い

なかった。

 

「今から、あたしがあの駅で恥かいた100倍位恥

ずかしい思いをあんたに返してやるからさ楽しみ

に待っときなよ。あんたが顔面に思いっきり蹴り

をぶち込んだ男も、ここにもうすぐ来るからさ言

っとくけど、あいつのテクニックは半端ないから

あんた、きっとヒイヒイよがるんじゃない」

 

「キャハハー」、「嫌だ!いやらしい」と三人の

若い女の子が囃し立てる様に騒いでいる。

 

「でも、この女あいつらに輪姦させるのは構わな

いけどさ、その後警察とかに駆け込まれたらヤバ

くね」

 

 取り巻きの女の子の一人が当然の不安を口にし

ていた。

 

「心配は、要らないってあたしが此処にこの女を

何で運んだと思ってんの」

 

 由香里には、当然見えてないが彼女が今転がさ

れている場所は、建設が始まったばかりのビルの

工事現場、その中に有るプレハブで出来た資材用

の八畳ほどの広さの小屋だった。ただ資材は、ま

だ無く小屋の中はガランとしている。

 

「面白いこと教えてあげようか、ここに立つビル

の基礎工事の為の生コンを流す作業がもうすぐ始

まるらしいんだけど、その前にこの女をさ穴掘っ

て埋めたらどうなると思う」

 

 由香里は、身動き出来ないまま女子高生の身の

毛もよだつ自分の処刑方法を聞いていたのだが、

急に頭部に重みを感じた。どうやら靴で頭を踏ま

れているみたいだった。ここに至って由香里は、

初めて自分のしたことに後悔を感じていた。叔父

の言う事をもう少し本気で聞いとけばよかったと、

そしてもう暫くするとこの絶望的な状況をさらに

悪化させる男がやって来るはずだった。

 

「あんた、そんな情報どこから仕入れたのよ?」

 

 固唾を呑んで次の言葉を女の子たちが待ってい

ると、女子高生が言った。

 

「援交で知り合ったオッサンがここの作業員だっ

た訳、で、そいつが言ったんだよ誰か消したい人

間がいたら自分の現場に埋めりゃ良いって、そう

すりゃ永久に見つからないとか言ったんだ。あた

しも面白半分で根掘り葉掘り聞いたのよ。そした

ら工事の日程からどこに埋めたら気付かれずにや

れるかペラペラ喋るんだよ。オッサンは冗談のつ

もりで言ったんだと思うけどあたしは冗談には取

らなかった。その話聞きながら、頭の中であの女

の事考えていた訳、それで捕まえるのは良いけど

その後どうするかまでは考えて無かった。でも、

これは使えるって思ったんだよね」

 

 女子高生は、そこまで一気に喋ると由香里の頭

を靴の先でコツコツと小突いて見せた。その時、

彼女らの背後のドアが開いた。驚いて一斉に振り

向くとそこに、いつの間に来たのか三、四人の高

校生くらいの少年たちが立っていた。

 

「遅かったじゃん、待ちくたびれたよ」

 

 と、女子高生が言った。

 

「悪いな、ちょっと集金に手間取ってたからよ。

それで、この女で間違いないのか?」

 

 そう、言われた女子高生は由香里の足もとに無

造作に置いてあるバッグの中から財布を取り出し

て、その少年達の中でも一番眼つきの悪い男に投

た。

 

「その中の、車の運転免許証の写真を見てみなよ」

 

 暫く、免許証の写真をじっと見ていた男は、財

布から金だけ抜き出すと後の者は床に落とした。

 

「クソ、思い出すとむかっ腹が立ってきた。あん

ときの生意気女に間違いないな」

 

「だろ、あたしもこの女を渋谷で見かけた時すぐ

に解ったよ。腹が立つけど、こいつ背が高くて結

構マブイからさ、それでむかついたんで後ろから

いきなり中身の入ったジュース缶で殴ってやった

ら、こいつ頭から血を流して失神してやがんの、

それでここまで運んだって訳」

 

 そこまで、聞いていた眼つきの悪い男が外に立

っている少年たちを呼んだ。

 

「おい、お前ら誰でも良いから酒と食料を用意し

ろ。それと、隣の現場事務所にストーブがある筈

だから、運んで来い。この女いたぶるにしてもこ

こは寒すぎるからよ」

 

 ストーブに火を付けるとプレハブ小屋は少し暖

かくなってきたが、由香里は、逆に不安と恐怖で

心が凍り付くのをひしひしと感じていた。どこか

ら持って来たのか男は、折りたたみイスにどっか

と坐って由香里を見ていたが、あらかた準備が終

わるとニタニタとほくそ笑みながら言った。

 

「さあ、パーティを始めるか」