星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~歪んだ歯車1~

 


歪んだ歯車


 今いる、世界が全てならそれに従うしかない、それは

 そうだろうとは思っている。

多分もう決まっている運命なのだと、自分がどう逆らっ

ても変えようもない事であったとして、それでも違う未

来があるような気持ちには時々なったりする。でも、も

う少し運命の女神が微笑んでくれるとしたら・・・・・

 

 
ドスンと尻もちをついた、痛みは無かった目の前が真っ

 暗になり暫く視界が戻らなかった。

 

漸く眼が元に戻ったとき状況が解ってきた。どうやら俺

は3,4人の男たちにボコられているようだ。記憶があ

いまいで思い出せないが居酒屋で一人酒を呑んでいた事

は思い出した。

 

どうやらこの男たちと何か揉めて店の外に連れ出された

のかも知れない。が、一向に思い出せない、俺はいつも

こうだ結局その夜は散々殴られ蹴られして解放された。

 

「いてててっあいつら手加減というものを知らないのか」

 

 足を引きずってアパートまでは何とか辿りついた。

 

部屋に入るとそのまま寝てしまった少し躰に残ってたア

ルコールが手伝ってくれたようで、布団がいつも敷きっ

ぱなしなのはこういうときに便利だと思った。

 

中村浩一32歳、結婚はしていない当然子供もいない彼

女 もいないが童貞ではないさりとて財産があるわけで

もない。おまけに今は失業中で仕事も無い要するにな

いないづくしのダメ男なのだ。

 

「うわーっひどい顔だな」

 

 あちこち痛むのを我慢しながら浩一は顔を洗い歯を磨

 いた。ないないづくしのダメ男のくせにこういう所は

妙 に潔癖症なのが、不思議な男である。

 

「いよいよ、来月で失業保険が切れるか・・・うーんど

 うするか、まあどうにか成るだろう」

 

 テレビのワイドショーを見ながら浩一は言った。どう

 もこの手の男というのは経済観念というものが少しい

や 随分と欠如しているみたいだ。どうにもならないな

ら普 通は仕事でも探しに行くかという発想をするのだ

が、こ の男はは金がもうすぐ底を突くと解っていなが

ら昨夜も 居酒屋に繰り出したのだ。

 

「さあ、今週のトピックスはこちらの話題です」

 

 ワイドショーの司会者が喋っているのを浩一は何気な

 く見ていた。

 

「今日は、最近話題の仮想通貨について、経済評論家の

 伊藤忠雄さんに詳しく解説して貰おうと思っています

。 では伊藤さんお願いします」

 

 いつものように、取ってつけたような笑顔で司会者が

 コメンテーターを紹介した後、テレビカメラが司会者

か ら経済評論家の伊藤に向く。

 

「はい、それでは最初に仮想通貨って何、という人もお

 られると思いますのでその辺りから話していきたいと

思 います」

 

 伊藤は、ADが持って来たパネルを出してスタジオに

 セットした。簡単な貨幣の流れを書いた物だった。

 

「そもそも、貨幣の始まりと言われているのは最初貝

 だとか石のようなものから始まったと言われています

 。簡単に言えば何でも良かったんですね。それまで物

 々交換していた物を誰かがこの貝とか石にはその品物

 と同等かそれ以上の価値がありますよって、決めたん

 ですねこの場合の誰かと言うのはいわゆる時の権力者

 と言われる人たちです」

 

 それから、伊藤の話は貨幣の歴史に移り、貨幣の種

 類等々こまごまとした説明が続いた。司会者がときお

 り絶妙のタイミングで質問をぶつけて来る。

 

「これで、貨幣という物がどんなものか大雑把ですが

 解っていただけたと思います。さてここで本題の仮想

 通貨の説明に行きたいんですが、これは2008年、ナカ

 モト・サトシと言う日本人がある論文を発表したんで

 すがその論文と言うのが、今日の話題の仮想通貨の概

 念を書いたものだったのです」

 

 一気にしゃべり過ぎたのか、伊藤は咳払いを一回し

 てそれからまた話し出した。

 

「その概念と言うのは、それまでの貨幣の在り方をひ

 っくり返すような内容でした。いままで貨幣は、国が

 これを保証しますからみんなでお金として認めてくだ

 さいよと言う感じで国の保証の元使っていた訳ですが

 この論文の仮想通貨と言われるものは、あくまでもイ

 ンターネット上ではありますが、後で説明しますブロ

 ックチェーンと言う技術を使って国ではなく、簡単に

 言うとその仮想通貨を使っている大勢の個人が管理す

 るいわゆる中央集権型ではなく」

 

「プチッ」そこまで聞いて浩一はテレビのスイッチを

 切った。

 

「くだらねえ・・・・・」

 

 そう言うと、浩一は畳にうつぶせになった、昨夜殴

られた痛みと空腹でテレビのコメンテータの話に

 だんだんと腹が立って来たのである。

 

「腹、減った」

 

 と、浩一がポツリと言ったとき携帯の着信音がまるで

 鳥が鳴いているようにさえづった。