星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。

【仮想通貨関連小説】~ REGAIN 2 ~

 


 駅を出ても僕たちはしばらく走っていた。何せ痴

漢現場から逃げ出した犯人なのだから出来るだけ犯

行現場から離れないとやばかった。


「はあーここまで来ればもう大丈夫よね」


 彼女が言った。初めて見たときも美人だと思った

が、息が上がってハアハア言っている彼女はさらに

美しかった。さっきは着てる服までは見る余裕がな

かったが、意外にラフな格好をしているなと思った。

ジーンズに上は胸のふくらみがはっきりわかるTシ

ャツそれに薄手のジャケットだった。


「フウー、久しぶりの全力疾走だったからもう息が

上がって、君は大丈夫?」


「全然、大丈夫でも面白かったわね。あの女子高生

逃げたーって叫んでたわよアハハハ」


 彼女は周りも気にせず、大きな口をあけて楽しそ

うに笑った

 

「あのー、お礼を言うのが遅れたけど助けてくれて

ありがとう。おかげで痴漢冤罪の犯人にならなくて

済みました。でも、助けてもらって言うのも何だけ

どどうして僕を?」


「顔、顔よ」


 怪訝そうなそれこそ「顔」をしている僕に彼女が

答えた。


「あの、大人を舐めきっている女子高生の生意気そ

うな顔にムカついたのよ」


 そんな事で助けてくれたのかと僕が思っていると

彼女がさらに付け加えた。


「それに、傍目で見てもあなたに痴漢が出来るよう

な度胸があるとは到底思えなかったの」


 痴漢行為が出来るのを度胸かどうかは別としてな

んだか褒められてるのか、けなされているのか複雑

な心境だった。


「でも、僕寝てたから知らなかったけど、君僕の隣

に座っていたんだね」


その時、彼女がいたずらっぽく笑って言った。


「あーっ、あれ全くの嘘よ」


「えっ、嘘だったの」


 驚いている僕に構わず彼女は、自販機にお金を入

れ炭酸のジュースを二缶取り出すと一本を僕に渡し

てくれた。


「はい、どうぞ喉渇いたでしょう」


 僕が恐縮して受け取らないでいたら、彼女は僕の

胸に缶ジュースを押しつけてきた。


「受け取れないよ、助けてもらったのは僕の方なん

だからせめてお金払わさせてよ」


と、僕が言うと彼女は缶ジュースのプルトップを引

き上げて中のジュースを飲みながら答えた。


「いいわよ、缶ジュースの一本や二本いつでも奢っ

てあげる。

それに助けたのだってあたしが好きでやったことな

んだから、あなたが恩に思う事ないわよ」


「解った、じゃあ遠慮なくいただくよ。それでさっ

き言った嘘って本当?」


 もらった缶ジュースのプルトップを引き上げると

プシュッと炭酸のガスが抜ける音がした。


「それは、本当の事よ最初はあなたの恋人でも装う

かと思ったけどあなたがもし芝居に乗らなくて否定

されたら困ると思って、咄嗟に考えたの中々良いア

イデアだったでしょ」


 僕は、感心しながら彼女の話を聞いていた。


「ふーん、そうなんだ。でもそのハッタリがバレる

とは思わなかったの」


 彼女はちょっと上目づかいにしながら言った。


「うーん、それも少しは考えたけどあの女子高生が

嘘をついてるって直感的に解ったの、私こう見えて

も結構人間観察には自信があるんだ。これは私の職

業にも関係してるのかも」


「職業?ところで君は何してる人、まさか警察関係

じゃないよね」


 僕は、真顔で聞いてみた。


「馬鹿ねえ、警察だったら貴方とっくに留置場の中

よ」


 そりゃ、そうだと思ったその上で彼女に聞き直し

た。


「じゃ、なんの職業か教えてよ」


 彼女は、少し考えたがすぐに答えてくれた。


「それは、秘密お互い相手のことはあんまり詮索

しないで別れましょ。知らない方が良い時もある

から、それより貴方会社に行く途中だったんじゃ

ないのそっちの方は大丈夫?」


 そう、言われて僕は会社の就業時間を完全にオ

ーバーしてるのに気づいた。慌ててスマホを出し

て会社に電話をかけた。


「あっ、課長、実は寝坊してしまって今大至急で

会社に向かってます。誠に、誠に申し訳ありませ

ん」


 僕が、平身低頭ひたすら謝り続けた結果課長も

分かってくれたみたいで「それじゃ、出来るだけ

早く来いよ」と言ってくれた。ホッとして電話を

 

切り視線を彼女に戻すと、もうそこに彼女の姿は

無かった。いつの間にか彼女は消えていた。


「とうとう、名前も聞かずじまいだったな」


 自販機の脇から黒い猫がヌッと出た。そして僕

をチラ見しそのままビルの間の細い路地にスルリ

と入って行くのを見ていて、あの猫みたいな女性

だったなと僕は思った。そして彼女が消えたと思

われる方角に向って一礼をして、それから急いで

僕は会社に向かった。