星野ヒカルの仮想通貨関連小説

初めまして星野ヒカルといいます。仮想通貨の可能性に惚れこみ自ら仮想通貨の投資をやりつつ仮想通貨を世の中に知らしめたいと思いこのブログを開設しました。



 眼が覚めると、いつの間に帰ったのか由香里

さんの姿は無かった。彼女に掛けた筈の毛布は、

いまは僕の躰にあり、小さなメモには簡単な伝

言が綴ってあった。

 

「お世話になりました。じゃ、またね。田崎由

香里」

 

 少し、二日酔い気味だったが気分は悪くなか

った。むしろ、昨夜の出来事を思い出しては一

人にやついていた。別に特別な事は何もなかっ

たんだけど、彼女が僕の部屋に泊まったと言う

事実は大きかった。それからは、月一回のペー

スで由香里さんは僕の部屋に来るのが日課にな

って居た。録画内容をチェックすると言うのは、

表向きの理由で、これは後になって解った事だ

が、実は彼女相当な映画好きだったみたいで、

録画の方は、早回しでさっさと見てしまうと、

何のことは無いその後は映画鑑賞会に早変わり

していた。そんな事が続いて2カ月が過ぎた頃、

変化は急にやって来た。


「これは、間違いないかも知れないわね」


 由香里さんは、いつになく真剣な表情で言っ

た。今日は、いつも由香里さんが来る月末では

なかったが緊急事態という事で、僕が呼んだの

だった。実は、いつもの様に一週間分をまとめ

て見ていたのだが、録画の再生が始まって間も

なくアパートの廊下にあの男が映っていた。最

初は、アパートの住人かと思ったのだが様子が

どうもおかしい、僕の部屋を通り過ぎたかと思

えば又、やってきてドアの前で中の様子を窺っ

て居る様なのだ。それと、時間帯が深夜一時過

ぎなのも怪しさを助長していた。

 

「それで、他の曜日は?」

 

 僕は、静止状態を解除して火曜、水曜と彼女

に見せたが、次にその男が現れたのは木曜日の

やはり深夜だった。金、土も映っておらず録画

はそこで終わった。


「月曜と木曜か、バイトか仕事の休みがその翌

日かも知れないわね。それか、単に用心して間

をあけたのかも知れない」


 由香里さんは、僕の眼をじっと見据えながら

言った。僕も何か言おうとしたけど彼女の声が

それを遮った。


「とにかく、もう少し待ちましょうか二回位じ

ゃ、この男が犯人と断定するのに早過ぎるよう

な気がする」


「そうだね、僕もその方が良いと思う」


 そう彼女に言いながら僕はちょっとドキドキ

していた。実は由香里さんとこんな感じにつき

合い?だしてから二ヶ月が経ったのだが、僕は

今日思い切って彼女をデートに誘うつもりだっ

た。だが、そのきっかけが掴めないまま由香里

さんは帰り支度をし始めていた。今日も無理か

なと内心諦めて、彼女を見送ろうしていた矢先、

彼女が僕に言った。


「結城さん、次の日曜日空いてる、?もし暇な

ら私につき合ってくれない天気も良さそうだし」


 勿論、異論のある筈も無くあっさりと僕の人

生初デートはいつものように彼女のリードで決

まってしまった。

 日曜日は、これ以上ない快晴で、かなりベタ

だと思ったけど渋谷のハチ公前で彼女と待ち合

わせた。ちょっと早すぎるかなと思ったけど約

束の時間の三十分前には着いていた。何をする

ことも無いので人の流れをぼんやりと眺めてい

たら、いろんな思いが頭の中をよぎって行った。

故郷の両親それに友だち、大学を卒業して今の

会社に入ってからの出来事そういう諸々の事が

なぜか愛おしく感じられ、とくに由香里さんと

出会えたことは、僕にとっては思いっきり特別

な事だった。


「何、一人で黄昏てるんですか?」


 いつの間に、来たのか由香里さんが肩から下

げたショルダーバッグを脇に携えて、腕組みを

しながら立っていた。その立ち姿を見て、相変

わらずスタイルが良いなと思った。僕の身長は

175センチだけど、一緒にならんでも彼女の

目線は僕とあまり変わらない、まあハイヒール

を履いているのを差し引いても170センチは

あるとみている。その高身長をさらに映えさせ

る今日のファッションだった。上はボーダー柄

の袖が幾分短い襟なしのシャツ、下はベージュ

色のパンツ、ベルトの代わりのサテンのリボン

がまたかわいさを倍増させていた。そんな、フ

ァッションチェックを僕がしていたら彼女が言

った。


「そんなに、じろじろ見られたら恥ずかしいわ、

何か私の服についてる?」


 由香里さんは、首を回して肩のあたりを見る

しぐさをして見せた。


「あっ、いやゴメン別に何も付いてないよ。そ

れより、今日は何処に行く?」


「それは、もう決めてあるの私について来て」


 そう言うと、由香里さんは踵を返してさっさ

と歩きだした。僕はあわてて彼女の後を追った。

いつもながら彼女には、リードされっぱなしだ。

しばらく歩くと渋谷ロフトが見えて来た。しか

し由香里さんが向かっているのは、雑貨なら何

でもそろう渋谷ロフトではなく、その向い側の

渋谷シネパレスと言う割とこじんまりとした映

画館だった。館内に入って由香里さんは、真っ

先に上映時間が書いてあるパネルの前に立ち、

じっと見つめていたがしばらくして口を開いた。


「残念、早くつき過ぎたみたい2回目の上映時

間が11時半になっているわね、今10時だからど

っかで時間を潰さないと」


「じゃあ、ここに来る途中にカフェがあったか

らそこでどうだろう」


 由香里さんがオッケーのサインを出したので、

僕達はそこに向かう事になった。カフェの席に

着いた後、僕はメニューを見ながら彼女に言っ

た」


「僕は、コーヒーだけど由香里さんは何を頼む

?」


 そう彼女に聞いて顔を上げて、僕は唖然とし

てしまった。由香里さんが泣いていたからだ。

両方の眼から、大粒の涙がポロポロ後からあと

から流れていた。僕は訳が解らず思わず心の中

で叫んでしまった。

 

「えーっ、このタイミングで泣く?えっ、えっ、

えー何で、何でだよー」